猫の恋やむとき閨の朧月

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オリジナル小説「珈琲関係」②

 

前回の続きは、下記リンク先より。

w-miomio-o.hatenablog.com

 

ねこなべ

 

 

2つの悩み事

「珈琲関係」を訪れてからというもの、1週間後にはお店で働くようになった。私がコーヒーを好きになったきっかけを与えてくれたお店。その魅力にハマった私はここで働くことを決意したのだが、二つの問題点があった。まずは一つ、あの厄介な男の存在だ。佐々木歩という男は私と同じ22歳。どういう経歴かまだまだわからないが、どにかく腹が立つ。この前の列の割り込みがあってからというもの、図々しいやつなんだという印象しかないし、この先仲良くなれるのだろうか。

そして、もう一つ。解決しなければならない問題があった。私が佐々木に横入りをされた一件があったあの日。就職面接があったのだが、実はあれは最終面接でその結果が昨日やってきたのだ。

 

「当社の採用について、慎重に検討いたしました結果、ご入社していただくことが決定いたしましたのでご通知いたします。これまで培ってきました実績と経験を、弊社でも発揮されることをご期待申し上げます」見事、採用通知のメールをもらえたのだ。

しかし、自分がこの採用を受け入れるのか、『珈琲関係』で働くことを決意するのか。

 

「あー、ここで働きたいと言った手前、今更断るわけにはいかないし」

「あら、どうしたの?堀河さん」

悩んでいるところに薫さんがやってきた。

「ああ、いやその就活のことなんですけど…」

「うんうん」

「それが、先日、面接を受けたところから採用通知が来まして…」

「やったじゃない!」

その反応は、何とも喜ばしいような感じで、祝われているような気がした。

「いや、でも私、ここで働きたいと言ってしまったので」

「ああ、そのことねー。それは堀河さんにお任せするわ。誰も止めはしないだろうし」

「でもなぁ…」

あの時飲んだコーヒーに感動して、自分もいつかはコーヒーを挽けるくらい一人前のバリスタを目指そうと思ったのだが、それは、半分は勢い「ここで働きたい!」と言ってしまったことだった。先のことを考えていなかったのだ。いざこんな状況になってしまうと、決心したはずの心が揺らいでしまう。

 

「でもね堀河さん、一ついいかしら」と薫さんが話し始めた。

「はい…」

「私の予想なんだけど、堀河さんはこのお店を選んでくれる気がするなー」

「どうしてでしょうか…?」

「ここで働くのはね、お客様に美味しいコーヒーを提供することだけが仕事じゃないの」

と、笑顔で答える薫さんは、嬉しそうな顔をしている。なぜ、そんな顔をしているのか私にはわからなかった。

「どんなことがあるんですか?」

「それはね…」と言いかけた時だ。

 

「薫ちゃん、コーヒー淹れたから持って行ってほしいな」とカウンターから、豆山さんの声がした。

「はーい、今持っていきますねー」

「じゃあ、堀河さん、この話しはまた今度ね」

「わかりました…」

そう言うと、薫さんはコーヒーをお客さんのもとへ運ぶために行ってしまった。薫さんが言いかけたことは、いったい何だったのだろうか。このことは親にも相談しなければならないし、どうしたものか。

 

『カランコロン』

 

 店の入り口にお客さんがやって来たので、私は席の案内へと接客へ向かった。そのお客さんは、70代くらいのおじいさんで、髪は白髪のなっており、ひげも白い。「絵に描いたような」とはこのことを言うのだろう。

 

「お嬢さん、見かけない顔だね。新人さんかな?」

「はい、今日から働くことになりました堀河と言います」

「堀河さんか。また随分若い子が入ったものだ」

笑顔で話すおじいさんからは、優しそうな雰囲気がすぐわかるものだった。それでいて元気そうで、これからもまだまだ長生きするんだろうなと思った。

「お席はいかがなさいましょうか?」

「カウンター席は空いてるかな?」

「はい、空いてます。ご案内しますね」

「ありがとう」

 私はおじいさんを先導し、席まで案内をした。