猫の恋やむとき閨の朧月

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映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を観てきました。

 

ねこなべです。

 

先日、映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を観てきました。

今回はこちらの映画の紹介と感想を書いていきたいと思います。

 

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前置き

『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は押見修造さん原作の漫画を映画化したものです。押見修造さんのほかの作品は『惡の華』『ぼくは魔理のなか』『血の轍』などがあります。

 

私の名前は“大島志乃”

高校生となった主人公・大島志乃(演:南沙良)は鏡に向かって、自己紹介の練習をしていた。志乃は家族以外の人前で喋ることが苦手でこうして鏡の前で練習している。

 

「私の名前は大島志乃です!」

今日は入学式。とても大事な日だ。

 

いざ自己紹介の時

家では自分の名前が言えて安心していたが、クラスメイトとは一切会話ができずにオドオドしていた。

 

訪れた自己紹介の時間、 クラスメイト一人一人が挨拶をしていくなか

「私の名前は大島志乃です。私の名前は大島志乃です」

と、志乃は小声で自分の名前を連呼する。

 

そして、自分の番、志乃は恐る恐る立ち上がり体を震わせながら話し始める。

「あ・・あ・・あ・・・」「あの・・あ・・・ああ・・・」

「お・・お・・おお・・・。お・・お・・・しま」

 一向に自分の名前が言えない志乃は今にも泣きそうな表情をしていて、目には涙が溢れそうになっている。そんな姿をクラス中が不思議そうに見ていた。

 

「し・・しし・・・。しの・・おおしま・・・です」

 ようやく名前が言えた志乃だったが「“しのおおしま”って、外国人かよ!!」というツッコミにクラス中が大爆笑。恥ずかしくなり座ってしまう志乃だったが、一人、彼女の存在を気にする人物がいたことを知る由もなかった。

  

上手く言葉が話せない志乃と、音楽が好きなのに音痴な加代

入学してから数日。志乃が下校しようと駐輪場から自転車を出そうとした時だった。

「あっ」

隣の自転車を倒してしまい、そのままに次々とドミノのように自転車が倒れていった。

 

その先には、同じクラスの岡崎加代(演:蒔田彩珠)が立っていてぶつかってしまう。「痛っ。痛いんだけど」と、彼女は冷たく一言ついて去っていったが、相変わらず言葉が出せない志乃は謝ることさえできずにその場をあとにする。

 

会話はもちろん、一向に誰とも友達になれない志乃は校舎の隅で昼食を取る日々が続いていた。

そんなある日のこと、いつものように昼食を食べているとHE BLUE HEARTSの「青空」を歌う加代の声が聞こえてきた。

 

陰に隠れつつ加代の歌声を聞いていた志乃だったが、節々で音程の外れるので思わず笑ってしまう。「誰!」と加代は驚いたように声をあげると、志乃はおどおどしながら姿を現す。半ば怒り気味でその場を立ち去ろうとした時

 

 「あ・・・ああ・・・あの!」

「こ、こ、このまえは・・・ ご、ごご、ご、ごめんなさい!」

ようやく謝ることができた志乃に対して「なんでそんな喋り方なの?病気?」と、不思議でしかたなかった加代は紙とペンを渡す。

 

「この紙に私のことで思った書いてみてよ。そしたらこの前のこと許してあげる」

何か面白い事、何か面白い事。悩んだ末に書いたものとは・・・。

これは、ここでは言えないことですかね。原作者の遊び心があって、僕はつい笑ってしまいました。

 

そしてこの出来事をきっかけに2人の距離は近づいていく。

 

仲良くなった二人?

仲良くなった二人は加代の家に行くこととなった。相変わらず喋れない志乃は「おじゃまします」すらぎこちない。そこで、時折筆談をするように促しながら何とか会話をすする。

そんなぎこちなくも微笑ましい会話を楽しむ志乃の目に“あるもの”が映った。

「か、か、加代ちゃん。ぎ、ぎぎ、ぎ、ギター弾ける?」

「引けるけどめっちゃ下手だよ」

「き、き、聞きたい」

頑固な志乃に押し負けてしまい「笑ったら殺す」そう言いながら嫌々ながらギターを弾き始める。

 

「どこが下手なんだろう?」と疑問に思った時だった。

テンションが乗ってきたのか加代は歌い始めたのだ。

だが、相変わらず音痴な彼女の歌声を聞き、志乃は思わず笑ってしまう。

 

「あっ、今笑ったでしょ」加代の顔は完全に怒っている。

 「わ、わわ、わ、わ、笑ってない」

「もういい!帰って!!」

そう強く言い放つと志乃は家から追い出されてしまう。

 

「これから仲良くなれそうだったのに」と、落ち込みながら帰路に就く。

 

二人の夢

喧嘩別れをしてしまった2人は同じクラスにいても会話のない日が続いていた。

 

そんなある日のこと、加代は一人カラオケ店の前に立っていた。

自分でも歌が下手であることは自覚していたので、少しでも上手くなるためにこっそり練習しに来ていた。今日も練習しようと店に入ろうとした時だ。

 

「あれ?加代じゃない?」

現れたのは、中学時代のクラスメイトの女子達だった。

 

 

「なんでこんなところいるの?あれ、もしかしてカラオケ行くの?」

「そういえば、加代ってめちゃくちゃ歌下手だったよね。合唱コンクールの時はマジでビビった」

「そうだ、また歌聞かせてよ。どうせ一人ならいいでしょ」と、強引にカラオケ店に連れ込もうとしている時だった。

 

 

「待って!」そこに現れたのは志乃だった。

「わ、わわ、わ、私たち、や、や、やや、約束してたんです!!」

先日、ギターを弾いている加代を笑ってしまったことを謝ろうと、タイミングを見計らいながら後を尾けてきた志乃が、加代のピンチを救ったのだ

志乃の喋り方を気味悪がった女子たちはその場から退散、やり過ごすことができた。

 

黙ったままの加代。志乃が先日のことを謝るために話し始める。

「こ、ここ、こ、この前はごめん。わ、わ、笑っちゃって」

「か、か、かか、か、加代ちゃんは・・・」

 

一拍あけて、志乃は話し続ける。

 

「加代ちゃんは私がこんな喋り方でも笑わなかったのに。私は笑っちゃって。ほんとダメだよね私」

初めて普通に会話をした瞬間だった。

 

驚く加代だが、この前の気まずさもあるせいか冷たくあしらってしまう。

「私は・・・」と自分のことを素直に話そうとした時だった。

「あんたはいいよね、その喋り方があれば仕方ないって済むから」と言葉を濁す加代。

「ねえ、あんた喋れないけど歌はちゃんと歌えるの?カラオケ付き合ってよ。あんたが歌ってよ」

「え?いや、無理無理・・・」

「いいから!」

 

そして志乃は半ば無理やりカラオケに付き合わされることなったのであった

 

喋ることができない志乃の意外な一面

加代が選曲したのは「翼をください」。マイクを持たされ、志乃は自信なく歌い始めたのだが・・・。

次第に声量が出て、声も澄み切った歌声へと変わっていく。「喋ることができない志乃がこんなに歌が上手いなんて」と、加代はただただ驚くしかなかった。

 

外が暗くなる前に店を出て2人は家路についていた。

「私、夢があるの」そう話し始めたのは加代だった。

「ミューッジシャンになることなんだ」

加代の屈託のない言葉に志乃は目を輝かせながら彼女の夢を応援するように

「か、加代ちゃんならできるよ」と返事をする。

「ねえ、一ついい?」

「なに?」

「私たち組まない?私が演奏して、志乃が歌うの」

「えっ!?」と驚く志乃に続けて加代が話す。

「志乃は歌が上手い。だからきっと2人なら夢を叶えられる。二人ならできるって思ったから」

“2人なら夢を叶えられる”。自信はないけど、この言葉に希望を感じた志乃は加代と組むこととなったのであった。

 

新たな一歩を踏み出した2人。そして、お互いの夢を叶えるために加代が「文化祭出よう!デュエットで!」と思い切った一言から、毎日の練習が始まるのですが・・・。

少しずつ変わっていく日常に、時に傷つき、時には反発をして。

 

この続きは劇場で。

 

感想

非常に面白い作品でした。何より、僕が大好きな押見修造さん原作の作品なので、ワクワクしながら劇場に足を運んでました。

『惡の華』『ぼくは麻理のなか』は原作を読んだことがあるのですが、今回の作品は原作を読んだことがなかったので、何も知らない状態で観てました。

「押見修造さん、爽やかな青春作品も描くことができるじゃん!」と、映画を観終わって思いました。

 

監督は湯浅弘章。乃木坂46では数々MVを監督し、現在日テレで放送中のテレビドラマ「探偵が早すぎる」BS放送では「ワカコ酒season1〜3」などなど。数多くの作品を手がけております。

 

そして主演の南沙良さん。僕は今回、彼女演技を初めて目にしたのですが、とても良かったです。この作品では要所要所で泣きの演技や、心の葛藤、加代との対立など。繊細な演技が要求される作品だったなと思います。それを演じきって、大島志乃という人物を映し出してくれました。

 

蒔田彩珠さんの演技も素晴らしかったです。見た目は女の子らしからぬキャラクターではありますが、心はしっかり女の子なんだなっていうのが節々に見られました。個人的に好きなのは「文化祭出て、二人のバンド見せてやろうよ!」って無邪気に言っているシーンですかね。突拍子もないことを真っ直ぐな想いで言う姿が女の子らしくていいなと思いました。

 

中盤から二人の間ですれ違いが起きてしまうのですが、終盤に「直接言ってくれなきゃわからないよ!!」と加代が叫ぶシーンがあります。このシーンは志乃が思っていることも、加代が思っていることも両方とも共感できる場面で、男の友情とは違う「女の友情」を見ることができる。そんな場面でした。

 

最後の最後のシーンも考えさせられる描写で、僕は原作を読んでいないのでわからないのですが、原作と映画の終わり方が同じなら、見た人に対して考えさせられるシーンだったなと言えます。答えをあえて出さず、見た人の想像に任せると言った終わり方は、押見修造さんらしいなと改めて思いました。

 

最後に

実はこの作品、押見修造さん自身の体験がベースとなっております。押見さんは『吃音症』という発音や言葉を円滑に発することができない病気を学生時代に患ったそう。志乃も同じく吃音症だったのですが、本編中では志乃が吃音症であることは言われておりません。

ただの吃音に悩む作品にするのではなく、「誰にでもこういうことがある」と想像させてくれるような作品になってほしいということで、あえて『吃音症』という言葉を使わなかったそうです。また、吃音症に悩む方を尊重した作り方で、考えさえられる作品になっております。

 

映画の公開自体はそろそろ終わってしまいます。公開している劇場は、都内なら新宿武蔵館のみです!8月中旬まで公開予定だそうですので、気になった方は是非足を運んでみてはいかがでしょうか!

shinjuku.musashino-k.jp

 

www.youtube.com

 

ではでは、ねこでした。

 

 

文責  ねこなべ